AI時代の特許出願ラッシュに思う
~“スカスカ特許”から一線を画す知財の在り方~
2025年4月、特許庁で1ヶ月に約1万件もの特許出願が公開されました。
出願人は、某巨大IT企業。どうやら生成AIを用いた大量出願のようです。
いやはや、「出願件数こそが知財戦略の要」と思っておられるようで…。
中身を拝見すると、構成要素を並べただけのような出願がずらり。
きっと、これは「企業価値を高めるための賢い戦略(笑)」なのでしょう。
そして、その“賢い戦略”に乗っかって出願を量産する特許事務所も後を絶ちません。
「うちはAIで1日100件出願できます!」と胸を張る事務所もあるのでしょうか(笑)
でも、私は思うのです。
生成AIを活用すること自体は否定しません。
私も、ChatGPTを含むツールを積極的に実務に活かしています。
しかし、AIにはできないことが、たしかにあります。
- 「なぜこの発明が必要なのか?」という問いを立てること
- 「誰の、どんな課題をどう解決するのか?」という構想を描くこと
- それを実社会で意味のある特許として結晶化させること
それらは、いずれも弁理士としての“思考”と“対話”の力が必要なプロセスです。
私たちがやっていること
私は、生成AIを「出願文書を量産する機械」とは捉えていません。
AIを“発明の共創パートナー”として活用し、
クライアントの技術課題を深く掘り下げ、
一緒に発明を構想し、意味のある知財として形にしています。
だからこそ、審査でも、実務でも、裁判でも通用する特許ができるのです。
“スカスカ特許”と一線を画すために
ChatGPTを使えば、特許文書は簡単に書けます。
1日で何十件も書ける時代かもしれません。
ですが、私はそこに価値を感じません。
「すごい件数」より、「本当にすごい1件」。
その1件が、社会や技術の未来を変えるのです。
大量出願の裏で、本当に価値ある発明が埋もれてしまうような状況には、静かに抗いたいと思っています。
最後に
私は、知財を「守るもの」ではなく、「社会を変える道具」だと捉えています。
生成AIで出願文書を“つくる”ことは簡単になりました。
でも、「意味ある知財を“育てる”」ことは、ますます難しくなっています。
問いを立て、技術と社会をつなぎ、未来に届く特許をつくる。
それが、これからの弁理士の仕事だと、私は信じています。
ご興味のある方は、ぜひ一緒に「意味ある知財」について語り合いましょう。
※この記事は、最近の特許出願動向に基づき、生成AIと知財実務の関係を私見として記したものです。