AI特許の洪水時代に、特許調査をどうするか?~生成AIによるスカスカ出願を前提とした、新しい調査戦略~

AI特許の洪水時代に、特許調査をどうするか?

~生成AIによるスカスカ出願を前提とした、新しい調査戦略~

2025年4月、特許庁での公開件数が月間1万件を超えました。
特に目立ったのは、ある大手IT企業による、大量のAI生成と思しき出願群です。中には、図面や構成が類似した出願が多数存在し、請求項の表現も抽象的で、技術的背景が読み取りにくいものも散見されます。

とはいえ、すべての出願を一括りにして「価値がない」と切り捨てるべきではありません。
出願人の技術開発意図や企業戦略に基づく重要な出願も含まれている可能性があるからです。

したがって、私たち特許実務者や調査担当者に求められるのは、
「何を見て、何を見落とさないか?」という選別力です。


📉 調査現場の混乱:ノイズと化しかねない公報群

以下のような問題が、調査現場ではすでに顕在化しています:

  • FIやキーワード検索に類似出願が大量ヒットし、有意文献が埋もれる
  • 構成が類似しており、レビュー負荷が過大
  • 請求項が曖昧で、技術分野の特定が困難

このような状況で、すべてを人手でレビューするのは現実的ではありません。


🤖 解決の鍵は「生成AIによる判別」にあり

AIが生んだ出願を、もはや人力だけで選別するのは限界があります。
だからこそ、
“生成AIで作られた出願は、生成AIでふるい分ける”
という発想が、現代の知財調査における合理的な対応策となります。

💡 実務でのAI+検索式フィルタリング戦略例:

  1. 出願人+公開日による検索式による事前分類
    例:2025年4月公開、出願人が特定企業である場合に「高密度出願群」として検索式で篩い分けを行う
  2. 請求項文字数+図面構成による検索条件フィルタ
    例:請求項1が300文字未満、図面枚数が少ない出願を“要注意群”として別途管理
  3. 生成AIによる簡易内容要約
    請求項+要約をプロンプトに入力:「この出願は何の技術に関するもので、どういう構成か?」
  4. 意味のある構成文脈を持つ文献のみを残す
    技術課題と解決手段の論理的関連性の有無/使用者・用途・技術上の貢献が明示されているかどうか

これらを自動化すれば、1万件のうち、検討に値する出願のみを抽出することが可能です。


✅ まとめ:調査は“読む”から“選ぶ”へ

今の時代、特許調査は情報量の増大に伴い、従来の「全文精読」型から「情報選別」型へと変化を迫られています。

「AIで書かれた特許は、AIで読ませて判断する」

これは妥協ではなく、より正確かつ効率的に“意味のある知財”を見極めるための新たな知恵です。

すべての出願を尊重しつつ、技術内容の核心をすばやく見抜く力。
それが、生成AI時代における知財調査実務の進化の姿であり、私たち実務者の果たすべき役割だと考えます。

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