弁理士よ、目を覚ませ。AI時代の明細書は、もう人間のためだけではない。
私は、この2025年6月28日に開催される「弁理士向け合宿セミナー in 長野」で、何よりもこの本質を伝えたいと考えています。
それは、AI時代において、従来の弁理士のこだわりや慣習に固執した明細書では、特許審査にすら耐えられなくなるという、避けがたい現実です。
判例至上主義の限界
判例に縛られ、形式にばかり気を取られ、肝心の技術の核心が見えなくなっている明細書。
“これは判例上こう書けとされているから”──そんな言い訳で生まれた文書に、どれだけの実効性があるのでしょうか?
誰のための明細書か?それは、技術を理解したい人のためであり、将来発明を守るための戦略文書です。
それが今や、「弁理士だけが読める謎文書」に成り下がっている。
クレームの“広さ”という幻想
“広く書けば守れる”という誤解も蔓延しています。
しかし、あいまいなクレームは、実際の審査や訴訟では「無効の温床」です。
広いのではなく、強く、通るクレームを書けているか。そこが問われています。
そして、AIが審査する時代へ
おそらく数年以内に、特許審査はAIが主導するようになります。
AIが明細書を解析し、キーワード・技術要素を抽出し、先行技術を自動でリストアップする。これは技術的にすでに可能です。
しかし──そのAIは「曖昧な日本語」「過剰な抽象表現」「技術が見えない記述」を読み解けません。
つまり、AIが理解できない明細書は、審査に耐えないのです。
人間の“こだわり”が、AIにとっては“ノイズ”になる
曖昧な用語、わかりにくい構成、わかりにくい日本語──これらはすべて、AIによる解析においてはエラーとなります。
今後の審査プロセスでは、「AIがどう明細書を読むか」=「どんな先行技術が自動提示されるか」が、そのまま特許の運命を左右します。
「翻訳しやすい日本語」という幻想
弁理士の世界には昔から「翻訳しやすい明細書を書け」と言われてきました。
その結果、ルールベースの不自然でぎこちない日本語が量産されてきたのです。
しかし、これからは、AIが日本語の明細書を生成し、AIが多言語に直接翻訳する時代です。
自然で論理的な日本語をベースにする方が、AI翻訳との親和性は高いのです。
つまり、「翻訳しやすいようにわざと不自然な書き方をする」という発想自体が、もはや時代遅れなのです。
明細書は、AIと人間の“共通言語”でなければならない
これからの明細書に求められるのは、次の3点です:
- 構造化された技術記述(課題→構成→効果の明示)
- 統一された用語と明快な表現
- 因果関係のある作用効果の記述
これらは、AIが技術的特徴を正しく抽出し、的確な先行技術を選び出すために不可欠な要素です。
弁理士よ、AI時代に進化せよ。
弁理士が変わらなければ、明細書は変わりません。
そして、明細書が変わらなければ、AI審査には通用しません。
もはや、「昔ながらの明細書」では通らない時代が目前に迫っています。
人間のためだけではなく、AIのためにも伝わる明細書を書く。
これが、これからの知財実務の最低条件になるのです。
変わる世界に合わせて進化するか、古い常識と共に取り残されるか。
その選択は、いま、私たち弁理士一人ひとりに委ねられています。
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