生成AIによる特許調査の精度が、かなり実務的になってきました

この数か月で特に変化を感じているのが、特許調査への生成AIの活用です。

以前は、AIにFIやIPC、検索式を聞いても、そのまま使える精度ではありませんでした。今でも、AIが出した分類や検索式をそのまま信用するのは危険です。

ただし、使い方を変えると、かなり実務的になってきました。

ポイントは、AIにいきなり検索式を作らせるのではなく、
AI自身に一次調査をさせ、近い公報や分類コードを確認させたうえで、検索式を組ませることです。

AIが Google Patents を一次調査に使う

最近の大きな変化は、AIが自分で検索式を考え、Google検索の site: 演算子を使って、Google Patents の個別公報ページを探しに行けるようになってきたことです。

つまり、人間が最初から検索式を完成させるのではありません。

まず、調査対象発明をAIに説明します。そのうえで、AIに、どのようなキーワードで探すべきか、Google Patents の個別公報ページを site: 演算子で探すにはどうすればよいか、見つかった公報のどこが近いのかを確認させます。

この段階は、あくまで一次調査です。網羅調査ではありません。

しかし、AIが Google Patents 上の近そうな公報をいくつか確認し、その公報に出てくる用語、分類、構成の表現を拾うことで、調査の当たりがかなり付けやすくなっています。

FIやIPCも、AIに単独で当てさせるのではなく、確認させる

以前は、AIにFIやIPCを聞いても、かなり怪しい回答が混じりました。今でも完全ではありません。

ただ、AIが実際の公報を確認し、さらにJ-PlatPatや特許庁の分類コードの解説を読みながら候補を出すようになると、FI候補の精度は明らかに上がります。

ここで重要なのは、AIに「分類コードを当てさせる」ことではありません。

重要なのは、実際に近い公報に付与されている分類と、その分類の意味を確認させることです。

これにより、AIの分類推定が単なる推測ではなく、実際の公報と分類体系に基づいたものになります。

現在の実務上の流れ

1. 調査対象発明をAIに説明する

発明の概要、構成、課題、効果をAIに入力します。単なる一文の説明ではなく、構成要素ごとに整理して入れる方が精度は上がります。

2. AIに Google Patents を一次調査させる

AIに、Google検索の site: 演算子を使って、Google Patents の個別公報ページを探させます。

site:patents.google.com 対象技術 キーワード

AIは、見つかった公報を読み、どの文献が近いか、どの用語が使われているか、どの分類が付いているかを整理します。

3. AIに分類コードの意味を確認させる

見つかった公報に付与されているFIやIPCについて、J-PlatPatや特許庁の分類解説を確認させます。

これにより、分類候補の精度が上がり、後の検索式設計にもつながります。

4. AIに検索式を作らせる

近い公報、使用されている用語、FI・IPC候補が見えてきた段階で、AIに検索式案を作らせます。

このときは、1本だけではなく、広め、標準、絞り込み用の複数案を出させます。そのうえで、人間が検索件数やノイズを見ながら調整します。

5. 商用DB又はJ-PlatPatで母集合を作り、CSVをダウンロードする

検索式が固まったら、商用データベースやJ-PlatPatで実際に検索し、母集合を作ります。

そして、発明の名称、要約、請求項、出願人、出願日、分類などを含むCSVをダウンロードします。

6. CSVをAIに読み込ませ、評価軸に基づいて分析させる

CSVをAIに読み込ませ、本件発明との関係を評価軸に基づいて整理させます。

例えば、構成が近いか、課題が近いか、解決手段が近いか、本件発明の必須構成を含むか、全文確認すべき文献か、といった観点です。

AIのスコアは信用しすぎない

CSV分析では、AIが文献ごとにスコアを付けることがあります。

ただし、そのスコアをそのまま信用する必要はありません。

むしろ重要なのは、AIのスコアそのものではなく、どの文献から読むべきか、どの文献は明らかに遠いか、どの文献は全文確認すべきかを判断するための補助になることです。

生成AIを特許調査に使う本質

生成AIを特許調査に使う本質は、AIに検索を丸投げすることではありません。

私の感覚では、次の流れを作ることが重要です。

  • AIに一次調査をさせる
  • 近い公報を読ませる
  • 分類体系を確認させる
  • 検索式の仮説を作らせる
  • CSV分析で母集合を整理させる
  • 最後は人間が判断する

生成AIによって、調査担当者や弁理士が不要になるわけではありません。

むしろ、AIが集め、整理した情報を見て、どの分類を採用するか、検索式をどこまで広げるか、どの文献を重視するか、どこに本質的な相違点があるかを判断できる人間の価値が、より明確になります。

AIは、調査を代行する装置ではありません。
調査の当たりを付け、探索空間を圧縮し、文献を読む順番を整理する装置です。

この使い方ができるようになると、特許調査はかなり変わります。

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