【大合議事件】 被告製品の構造~本件特許発明1との関係~ その4

大合議事件の争点の続きです。

本件特許発明1との関係において、被告製品の構造は、以下の通りです。

被告製品は、1~9まで、ありますが、ここでは、代表的な被告製品1をピックアップします。

乙第1号証被告製品1写真

上記の被告製品の写真をご覧いただければお分かりいただけると思いますが、明らかに、被告製品のローラ部分(ローリング部)は、先端側が扁平していて、洋ナシ状になっており、半球状の形状を有していません。

 

 

 

 

 

 

そうすると、前回の「ボール」ってどんな形状を含むのか?という論点と関係していることが分かります。
もし、審決取消訴訟での発明の要旨の認定通り、本件特許発明における「ボール」が、断面が真円状のものか、若しくは、半球状の部分を有するバルーン形状のものに限るのであれば、被告製品には、明らかに半球状の部分がないことが確認できるわけですから、被告製品のローリング部は、「ボール」には、該当しないということとなり、技術的範囲に属さないという結論になるのです。

これは、法的には、どういう論点かというと、新規性進歩性を判断するための「発明の要旨認定」は、特許権の権利範囲を決める「特許発明の技術的範囲」を決して超えることはないということと関係しているのです。
リパーゼ最高裁判決では、特段の事情がある場合に限って、明細書に記載した「発明の詳細な説明」の記載を参酌することが許されるにすぎないとされています。
一方、特許法70条2項は、明細書及び図面を考慮して、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するとしています。

このような考察からいくと、本件特許発明1では、「ボール」と概念的に広さをもって、記載がされており、しかも、明細書には、バルーン形状という広がりをも記載されていますが、じゃあ、バルーン形状って何なのかという段階になった場合には、審決取消訴訟での発明の要旨認定により、半球状の形状を含むものでしょ、ということになって、結果、被告製品は技術的範囲に含まれないでしょというのが、今回の一審被告の主張になります。

じゃあ、仮に、被告製品のローリング部が本件特許発明1の「ボール」に該当するとした場合に、その「ボール」外周面間の間隔って、どこってことになります。

一審原告は、ボールの最短部分の間隔を外周面間の間隔であると主張しています。

でも、本件明細書で間隔Dとされているところは、下図のように、肌の摘み上げと関係している箇所ではないのでしょうか。ボールの断面が真円状であれば、最も狭い箇所が、摘み上げの作用効果と関係することとなるのでしょうが、バルーン形状のボールの場合に、最も狭い部分が、摘み上げと関係しているのでしょうか?


 

 

 

 

 

 

 

 

 

単純に、そういう疑問が湧くわけです。
そして、被告製品を見てみます。赤いラインが、13mmの間隔のところです。下記の写真のように、13mmの間隔のところは、まったく、肌に触れることはありません。

 

 

 

 

 

バルーン形状の場合に、外周面間の間隔がどこを指すのか、明細書及び図面に定義づけされていないという明細書の不備が根本原因であるのですが。
その点については、前回、訂正要件が認められてしまっているという最重要問題と関係しているのです。客観的に見た場合に、じゃあ、サポート要件違反でしょと思われるのかもしれませんが、訂正要件を認めてしまっている以上、話が、一気にややこしくなってしまっているんですよね。

もし、この記事を読んでいる弁理士がいましたら、この事件の本質は、そこにあるということをご理解ください。そして、先日記載しました「広すぎる特許請求の範囲への戦略」で記載した内容を、よくご自身の中で、消化してみて下さい。単に、広い請求項が特許になったからって、大喜びしている弁理士(私も含めて)がたくさんいますが、本当に、それで、侵害訴訟に耐えるのですか?

結局、本件特許発明1との関係では、ボールとは、真円状、半球状のものをいうのであり、被告製品は、半球状ではないから、本件特許発明の技術的範囲に属さないという結論で、終わってしまうのでしょうね、というのが、個人的な見解です。

外周面間の間隔についても、判決では何か触れられる可能性はあるでしょうが、その点については、結局、サポート要件違反の無効理由と絡んでいるので、技術的範囲を画定できないこととなってしまうから、判決は書きにくいですよね。となると、上述した半球状の論点で、完結させるというのを予想するところです。

このように、本件特許発明1について、どのような判断がなされるのか、期待して待ちたいと思います。

そして、次回は、いよいよ、包袋禁反言の重要な論点を含む、本件特許発明2について、説明していきます。

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